「ろ」の門爆破事件
昭和十二年三月十八日、姫路城「ろ」の門東方土塀の石垣が、大音響と共に吹き
飛んだ。突然の爆発で飛ばされた石は、50m以上離れた備前丸石垣に激突し、地
上に落下、落ちた拍子に地面でバウンドし、「ぬ」の門前まで転がっていった。
この白昼夢のような出来事に、人々は一瞬何が起きたのか訳の判らないまま逃げ
惑うしかなかった。
折しも、姫路城では、松竹映画「大坂夏の陣」のロケーションが行われていた。
この日は、映画のクライマックスである大坂城落城シーンの撮影が進行していた。
実際に、石垣に少量の爆薬を仕掛けて迫力ある場面を撮ろうというのが当初の計
画であったが、どういう手違いからか、大人が数人がかりでも動かないような石
が空中に舞うぐらいのとんでもない爆発が起ってしまった。
この大事故で、たまたま現場近くで撮影の様子を見物していた女性に石が当り、
不幸にも亡くなった。ほかに5人が重軽傷を負った。
国宝建造物である姫路城内で起きた前代未聞のこの不祥事は、大々的に報道され、
文部省や姫路署も事故に至る経緯を調査した。最初ロケ隊は、石垣の隙間に小石
を詰めて、爆発によって小石が飛び散るぐらいのシーンを撮りたいと申し出てい
る。当時、西の丸は修理工事中であった。ロケ隊の申し出に工事主任は、近々修
理する石垣を使っての撮影であること、また積み替えが予定されている場所でも
あったので安易に許可を与えたことが判明した。このため、ロケ隊の助監督二人
と煙火製造業者が業務上過失傷害致死に問われた。また、撮影を許可した工事主
任と姫路城管理事務所の責任者が職を解かれた。
索引