大坂での数々の苦しい試練や姫路での幸せとその後の不幸。今となっては
すべて遠い過去の出来事となっていた。すでに江戸に戻ってから四十年の
歳月が流れようとしている。千姫も寄る年波には勝てず、昨年から病気が
ちであった。古希といえば70歳である。寛文六年(1666)二月、病状は悪
化し重態に陥る。薄れゆく意識の中で千姫は一体何を感じていたのだろう。
千姫の頭の中を過去の出来事が走馬灯のように駆け抜けてゆく。若かった
頃の波乱万丈の人生を振り返って後悔したのだろうか。
二月六日、長いようで短かった千姫の人生は終幕をむかえようとしている。
千姫、その名を後世に残す一人の女は眠るように亡くなった。
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