|
13. 度重なる不運
|
|
もともと付知の国有林は明暦の大火(1656)で江戸城が炎上したときに御用材を切り出し
|
|
て以来手付かずのところで、戦前は帝室林野局の伊勢神宮造営用備林として保護されてい
|
|
ました。そういう背景から姫路城の心柱を切り出すことについてあまり歓迎しない空気が
|
|
ありました。そこを四方八方手を尽くしてやっと伐採の許可を得ることができたのです。
|
|
心柱探しに東奔西走した関係者の見守る中、昭和34年4月14日に姫路城の心柱となる檜材
|
|
を伐倒しました。しかし、ここで思いも寄らない悪夢が起りました。前もって木の倒れる
|
|
方向を綿密に計算して不測の事態を防ぐ最大限の努力をしていたはずなのに、切り倒され
|
|
た木は胴を打って折れてしまったのです。全員言葉もなくただ立ち尽くすのみでした。
|
|
この瞬間に心柱探しに掛けた情熱や労力の全てが水泡に帰してしまいました。何という不
|
|
運なのか、いや不運ということばだけでは言い表せない、これが天命というものだったの
|
|
でしょうか。けれども、いつまでも天を呪っている暇もありませんでした。現実に姫路城
|
|
の解体修理はまちがいなく進行中であり、地元では心柱の到着を首を長くして待っていた
|
|
のでした。
|
|
|